栗コラム


◆ ピアノと電子ピアノ

 

クラシックのピアノをキチンとやるなら、生ピアノは必須。コレは絶対です。

(※ 生ピアノ=アコースティックピアノ(要は普通の本当のピアノ))

子供がピアノを習うのは、基本的にはココに該当すると思います。

(最初から趣味として習わせるケースも、あるのかもしれませんが……)

 

その他の場合には、好きなモノ、目的に合ったモノを選べばいいんです。

目的に適っていれば、電子ピアノも素晴らしい楽器です。

 

ただし「電子ピアノは、生ピアノとは違う楽器」ですので、

「生ピアノの練習用に電子ピアノ」って考えは要注意ですよ、

――って事だけ認識して頂ければOKなんです。

 

鍵盤上の運指を覚える練習と割り切れば、電子ピアノもアリですが、

ならばピアノタッチである必要は無いし、極端な話、紙鍵盤でも可能です。

(紙鍵盤……音楽の教科書の裏表紙みたいに、紙に描いた鍵盤のコト)

 

電子ピアノの鍵盤は、生ピアノを真似て重みを付した「スイッチ」です。

強弱はセンサーで読み取ってくれても、物理的な反動が無いので、

生ピアノと電子ピアノでは、力の入れ方のコツが違ってきます。

 

年々進化している電子ピアノですが、結局「進化したスイッチ」です。

目指しているのが「ピアノタッチに近づく」なので、

いくら物真似の上手い人でも、本人にはなれないのと同じです。

(我々世代には、栗田貫一のルパンは「違う」んです。ニセモノなんです。

 事情が事情なので批判はしませんが、我慢できないので、私は観ません)

 

私自身、ピアノ演奏は全然ダメですが、

その昔、姉のピアノをオモチャにして遊んでいたり、

お遊びバンドで色々な鍵盤楽器を弾いたりしたので、

キータッチの違いは、よ~く知っています。

素人でも「感じる」違いです。ちょっと神経を研ぎ澄ませば、誰でも。

 

出てくる音も、全く違います。

色々なファクターの影響を受けて幅広い豊かな音色を出す生ピアノ。

準備された音源をセンサー連動のプログラムで再生する電子ピアノ。

 

生ピアノは、反応(音)が、体(演奏)と直に繋がっています。

 

私は生ピアノに慣れていたので、ピアノタッチの電子ピアノを弾いた後は、

腕の疲れ方が、不快…というか、痛みに近い感覚で残りました。

ただ、電子ピアノ用の弾き方のコツをつかむと、多少は楽になります。

 

生ピアノから電子ピアノのシフトは、ちょっと気をつければ出来ますが、

初期段階で毎日の練習を電子ピアノにして身に付けてしまうと、

生ピアノの特性を活かす弾き方は、別途訓練しないと無理だと思われます。

 

MT車で運転を身に付けた人は、特に苦も無くAT車を運転できますが、

MT車の運転は、しばらくしていないと、思い出すのに苦労しますよね?

AT車で運転を身に付けた人は、MT車の運転、出来ませんよね?

そんな感じです(もちろん、MT=生ピアノ、AT=電子ピアノです)。

 

『MT車の練習をするために、AT車を買いますか?』ってコト。

運転するだけが目的であればAT限定でよいわけですが、

MT車の運転をしたいのであれば、あまり意味ないですよね。

 

『そろばんの練習をするために、電卓を買いますか?』でもイイです。

計算するという目的なら、どちらでもいいですが、

電卓をいくら練習しても、そろばんは上達しません。

(これは少々極端すぎる例ではありますが……)

 

なまじ、見た目や演奏方法に共通項が多いので、

鍵盤楽器(キーボード類)を選ぶ際は、目的を明らかにしておかないと、

無駄な買い物になるリスクが高いのです。

生ピアノ、電子ピアノ、オルガン(これも細分化されます)、電子オルガン、

シンセサイザー……(まだ沢山ありますが)、すべて似て非なる楽器です。

 

ちなみに、生ピアノでも、グランドとアップライトでは、

構造が大きく違うので、やはりタッチは違います。

ただし、電子ピアノみたいに別次元ではないです。

ま、4速MTと5速MTみたいなものかな(笑)……ちょっと苦しいけど。

 

楽器オタクによる「ピアノと電子ピアノの違い」講座でした。